プレゼン資料を翻訳するときは、まず意味を保ち、訳文に合わせてレイアウトを整えます。文法が正しくても、主張が原文より強くなったり、グラフの条件が抜けたり、文字が枠に収まらず読みにくくなったりすることがあります。
承認済みの原稿を一つに定め、重要な用語を記録し、翻訳後は資料全体を通して確認しましょう。ここでは英語からフランス語への例を使い、すべてのスライドを窮屈な二段組みにせず、意味と読みやすさを保つ方法を紹介します。確認を終えた訳文は、Presentiのテキストからプレゼン資料を作る機能で下書きにできます。ただし、資料の生成と翻訳の確認は別の作業です。

二つの言語をどう届けるか決める
二言語の資料でも、すべてのスライドに両方の言語を載せる必要はありません。訳文に必要なスペースは見せ方によって変わるため、翻訳に入る前に使用場面を決めます。
| 形式 | 向いている場面 | レイアウト上の注意 |
|---|---|---|
| 言語別の資料 | 言語ごとに別の会を開く、または各自で資料を読む。 | それぞれ自然な表現と改行を使える。更新に備えて、対応するスライドのIDをそろえる。 |
| 一枚に二つの言語を併記 | 用語、指示、引用など、限られた表現を比較する。 | 掲載する内容を絞り、各言語の位置を明確に統一する。 |
| スライドは一言語、説明は通訳を介す | 異なる言語の参加者が同じ会に出席する。 | 通訳者と用語を共有し、通訳の時間を確保する。必要に応じて、読むための翻訳版を配る。 |
詳しい業務説明なら、各段落の横に訳文を並べるより、言語別に分けたほうが読みやすい場合があります。一方、用語を学ぶ講座では対訳そのものが役立ちます。「二言語だから同じ形にする」のではなく、参加者が何をするかで選びましょう。
翻訳しやすい原稿を用意する
内容に関わる修正を済ませてから翻訳に渡します。版が分かるファイル名を付け、スライドはS03、グラフのタイトルはS03-chart-titleのように、変わらない識別子を用意します。途中でスライドが増えても、指摘の対象が分からなくならないようにするためです。
見出しや本文だけでなく、軸ラベル、凡例、脚注、図中の文字、画像の説明、発表者ノート、最後に求める行動も集めます。画像に埋め込まれた文字は別に扱います。元データと編集の権限があれば編集可能な文字として作り直し、難しければ画像の意味を説明する訳文を添えます。
言語に加えて、対象の地域も指定します。フランス向けとカナダの組織向けでは、同じフランス語でも用語が異なることがあります。参加者が普段使う言葉、文体の丁寧さ、変更しない製品名、組織で承認済みの表現を伝えましょう。ロゴだけでこれらを判断してもらうことはできません。
用語集は小さくても構いません。たとえば英語の「owner」は、法的な所有者、業務の責任者、アカウントの管理者などを指します。単語を二列に並べるだけでなく、この資料ではどの意味なのかを短く説明します。
英仏の例:問い合わせの引き継ぎを説明する
次は、社内のサポート業務を説明するために作成した架空の例です。英語版とフランス語版を別々に用意し、問い合わせを別のチームに渡すとき、誰が対応を引き受けるかを伝えます。
| 要素 | 英語の原文 | フランス語訳 |
|---|---|---|
| タイトル | Assign an owner before handing off a request | Attribuez chaque demande avant de la transférer |
| 指示 | The receiving team confirms who will handle the request. | L’équipe destinataire confirme qui prendra la demande en charge. |
| 根拠 | 24 of 120 requests changed teams more than once in September (20%). | En septembre, 24 demandes sur 120 ont changé d’équipe plus d’une fois, soit 20 %. |
| 行動 | Start the pilot on October 7, 2026. | Lancez le pilote le 7 octobre 2026. |
タイトルでは「owner」を所有権の意味で直訳せず、担当を割り当てる行動として表現しています。根拠の文は「9月に120件中24件の問い合わせが、チーム間を複数回移った」という意味です。「複数回」を落とすと指標が変わります。24÷120=20%という計算と、対象月も保っています。
さらに「pilot」がその組織で使う呼び方か、引き継ぎ先のチームが本当に担当者を決めるのかも確認します。翻訳をきっかけに原文の曖昧さが見つかることもあります。業務の責任者に確かめ、必要なら両言語を直します。
訳文に合わせてレイアウトを調整する
英語版に細いタイトル欄、三つのカード、小さなグラフがあるとします。フランス語の指示がカード内で一行増えたら、まずカードの幅や高さを広げ、隣のカードとの配置を整えます。根拠と手順を一枚に詰め込めない場合は、気づきを示すスライドと行動を示すスライドに分け、同じ出典情報を引き継ぎます。
英語と同じ行数に収めるためだけに、訳文の文字を小さくしないでください。W3Cの翻訳時の文字量に関する解説(英語)は、言語によって長さ、複合語、文字の寸法が変わることを説明しています。これは国際化されたコンテンツ全般の話であり、すべてのスライドを一定の割合で広げるという規則ではありません。余裕のあるレイアウトを用意する判断材料として使います。
言葉とレイアウトを分けて確認する
最初は参加者の目的を意識して原文と訳文を照合し、義務、確実性、比較、例外を確認します。「遅延を減らす可能性がある」を「遅延をなくす」に変えてはいけません。「最大10アカウント」と「10アカウント」も同じではありません。言い切るほど正確になるわけではないのです。
数字は、値だけでなく単位、分母、集計期間を比べます。小数点や日付の表記は対象地域に合わせても、数量は変えません。数字だけの日付が二通りに読める場合は、月を明記します。通貨も明示し、翻訳を理由に換算しないようにします。
次に訳文の資料だけを読み、タイトルの流れで話が通るか、図中の用語がそろっているか、指示を口に出して自然かを確かめます。レイアウトは、発表時の大きさで次を見ます。
- 見出しやラベルが意図せず改行され、欠けたり他の要素に重なったりしていないか。
- 選んだフォントで正しく表示できない文字がないか。
- 凡例、出典、単位が小さくなりすぎていないか。
- 画像内に未翻訳の文字が残っていないか。
- ノート、画像の説明、リンクが別の言語版を指していないか。
右から左へ書く言語では、その言語を読める人に、使用先の編集ソフトで文字の方向、数字や句読点の混在、図の流れ、配置を見てもらいます。文字を訳すだけでは、周囲のレイアウトまで適切になったとはいえません。
意味を守る翻訳依頼文を用意する
次の依頼文は、翻訳者、同僚、翻訳支援ツールを使う担当者と共有できます。角括弧の項目を埋めてから使ってください。翻訳依頼書と対訳管理表は、コピーして使えるテキストファイルでも用意しています。
承認済みの資料を[原文の言語・地域]から[翻訳先の言語・地域]へ翻訳してください。 対象者:[役割、前提知識、取ってほしい行動]。 使用形式:[言語別資料/必要な箇所だけ対訳]。 添付の用語集を使い、次の名称は変更しないでください:[名称]。 すべての数値、単位、分母、比較期間、出典情報を保ってください。 義務、確実性、例外の強さを原文から変えないでください。 曖昧な表現は推測で補わず、確認事項として示してください。 スライド・要素ID、原文、訳文、未解決の質問、レイアウト上の注意を一覧にしてください。 グラフのラベル、図、ノート、画像の説明も対象に含めてください。
たとえばPlus AIの公式ガイド(英語)は、スライド単位や資料全体を翻訳する書き換え機能を案内しています。同時に、出力言語が一定しない場合もあると説明しています。どのツールで初稿を作っても、対訳管理表があれば用語や意味の問題を具体的に確認できます。
確認済みの訳文から新しい資料を作るなら、Presentiで構成やレイアウトの下書きを作成する方法もあります。編集時は承認済みの文面を手元に置いて照合します。必要な入力形式と書き出しについては現在の料金プランを確認してください。PPTX・PDFの書き出しは有料プランの機能です。
納品後も言語間の内容をそろえる
言語、原稿の版、確認状況が分かるファイル名や送付文を付けます。英語の原稿で数字が変わったら、変更したスライドと要素を記録し、対応する訳文とレイアウトを見直します。以前の集計期間が残っている資料は、翻訳を終えていても更新が完了したとはいえません。
意味に関わる変更ごとに、原文の変更、対象スライドID、修正した訳文、レイアウトの確認、承認者を一行に残します。この記録が、最初の会議の後も二言語の資料を正確に保つ助けになります。