箱ひげ図は、数値データの中心とばらつきをグループ間で比較するのに役立ちます。箱の中の線は中央値、箱の両端は第1・第3四分位数を示し、ひげの長さは定めたルールに従います。以下の例では、最大値までひげを延ばさず、基準から外れた値を独立した点として表示します。
「どのグループの平均が高いか」だけでは答えが足りないときに使う図です。中央値が同じでもばらつきは異なり、中央値が低いグループに非常に長い時間の事例が含まれることもあります。データから判断できない優劣を決めつけず、こうした違いを見せましょう。
箱ひげ図は、同じ数値尺度で複数の分布を比べる場合に適しています。聞き手に読みどころを伝えるには、グラフを注釈で分かりやすく説明する方法も役立ちます。データが少ない場合は個々の点も残すと、箱だけでは見えない情報を補えます。

見出しを考える前に、箱の意味を確認する
NISTの箱ひげ図ガイドは、最小値から最大値までをひげで示す形式と、判定境界を使って外れた値を区別する形式を説明しています。この記事では後者を使います。四分位範囲(IQR)をQ3 − Q1で求め、下側の境界をQ1 − 1.5 × IQR、上側をQ3 + 1.5 × IQRとします。ひげの端は、その範囲内にある実測値の最小値と最大値です。範囲外の値は別の点で示します。
このルールによって図の読み方が変わります。上側のひげが最大値とは限りません。判定境界は計算上の基準であり、観測値でも、ひげの端そのものでもありません。読み手が線の意味を推測しなくて済むよう、図の近くにルールを示してください。
比較できる三つのグループを用意する
三つの作業ステーションがある架空の梱包業務を考えます。表には各ステーションで完了した10件の注文を載せ、梱包開始から完了までの時間を分で示しています。図を説明するための数値であり、Presentiの顧客実績や製品性能の測定結果ではありません。
| ステーション | 短い順に並べた梱包時間(分) | 注文数 |
|---|---|---|
| A | 4, 5, 6, 6, 7, 7, 8, 8, 9, 20 | 10 |
| B | 5, 6, 7, 8, 9, 9, 10, 11, 12, 13 | 10 |
| C | 7, 8, 8, 9, 9, 9, 10, 10, 11, 12 | 10 |
三つとも単位と計測の開始・終了条件は同じです。そのため一つの尺度で読めますが、仕事量が同じだと確認されたわけではありません。品目、注文の複雑さ、人員配置は示しておらず、未完了の注文についても分かりません。実務上の提案につなげるには、こうした背景を確認する必要があります。
元データは注文1件につき1行にします。先にステーションごとの平均だけを求めると値が三つになり、箱ひげ図で説明したいグループ内の変動が失われます。
元の値から一つの箱を計算する
この例の四分位数は、下半分の中央値と上半分の中央値で求めます。各グループには昇順の値が10個あります。全体の中央値は5番目と6番目の平均、Q1は1〜5番目の中央値、Q3は6〜10番目の中央値です。三つとも同じルールを使います。
Aで計算を追ってみましょう。5番目と6番目はどちらも7なので、中央値は7です。下側の五つは4、5、6、6、7で、中央値は6。上側の五つは7、8、8、9、20で、中央値は8です。したがって、IQR = 8 − 6 = 2分になります。
下側の判定境界は6 − 1.5 × 2 = 3、上側は8 + 1.5 × 2 = 11です。Aには3や11という観測値はありません。境界内の最小値は4、最大値は9なので、ひげの端は4と9になります。20分の注文は独立した点で表示します。
| 指標 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| Q1 | 6 | 7 | 8 |
| 中央値 | 7 | 9 | 9 |
| Q3 | 8 | 11 | 10 |
| IQR | 2 | 4 | 2 |
| 下側/上側の判定境界 | 3 / 11 | 1 / 17 | 5 / 13 |
| 下側/上側のひげの端 | 4 / 9 | 5 / 13 | 7 / 12 |
| 境界外の値 | 20 | なし | なし |
表の値の単位はすべて分です。表計算ソフトやグラフ作成ソフトが別の四分位数の求め方を使うと、特に少数データでは箱の端が異なることがあります。設定を確認して統一し、別の計算法で描かれた図に合わせて箱の端だけを手で動かさないでください。元の値と採用した方法を、グラフと一緒に残します。
三つの箱を同じ尺度に並べる
この例には横向きの配置が向いています。各ステーションを1行ずつ並べ、0〜22分の共通の時間軸を使います。箱の高さはそろえます。形から件数を推測させず、各ステーションの横に「n = 10」と記します。
箱内の中央値の線を明確にし、ひげの端を実際の値の位置に描きます。軸を切らずに20分の点も見せます。各10件だけなので、箱の上下に小さな点で個々の値を添えれば、元の観測値も残せます。同じ値が重なる場合は、横方向の位置を変えずに縦方向へずらします。
ラベルは直接付け、色は控えめにします。鮮やかな赤い点は誤りや失敗を連想させますが、この点は選んだ統計上の基準に当てはまるだけです。特定の比較が発表の主題なら、その二つを強調し、残るステーションも背景情報として読める状態にします。
図の下には、「説明用の完了済み注文。各ステーションn = 10。四分位数は上下半分それぞれの中央値。ひげは1.5 × IQRの判定境界内にある観測値まで」と短く添えます。詳しい計算は表やノートに置き、図の上へ詰め込まないようにしましょう。

スライドで答える比較を選ぶ
典型的な梱包時間を話し合うなら、「Aの中央値が最も低いが、20分の注文も1件ある」という見出しにできます。Aの中央値は7分、BとCは9分であり、Aの最長値も隠していません。「Aが最も速いステーション」とすると、変動を隠し、この注文群から言える以上の判断を含んでしまいます。
ばらつきを話し合うなら、「BとCの中央値は同じだが、Bの中央部分はより広く分布している」とします。中央値は両方9ですが、Bの箱は7〜11、Cの箱は8〜10です。どちらが「良い」と言うのではなく、両端の値を言葉でも説明してください。
箱の重なりを有意差検定として扱ってはいけません。重なっていなくても、有意差の証明にはなりません。これは小さな例の記述的な比較です。ステーションが差を生んだ原因であること、今後も同じ分布になること、人員変更で業績が改善することは、この図からは分かりません。
箱ひげ図では分布の形の一部が見えなくなります。より多いデータの集まりや空白が知りたいなら、度数分布を示すヒストグラムのほうが適している場合があります。一枚に複数の種類を足すのではなく、問いに答える図を選びましょう。
目立つ点を消さずに調べる
Aの20分の注文は、記録へ戻って確認します。単位と時刻は正しいか、定義した梱包時間に含まれるか、中断の記録があるか。図だけでは答えは出ません。複雑な注文が正しく記録された場合と、時刻の単位を誤入力した場合は異なります。
正しい記録なら残します。元データの誤りが確認できたら、その値を修正してグラフ全体を再計算します。より狭い注文種別だけを見たい場合は、抽出条件を明示し、全体の図も背景として残します。見栄えのために最長の注文を消すと、聞き手に知らせずに問いを変えることになります。
比較をスライドの依頼文にまとめる
グラフ一つ、根拠のある見出し一つ、読み解くために必要な情報を用意します。この例なら、次のように依頼できます。
三つの架空の梱包ステーションについて、各10件の完了済み注文の時間を比較してください。提供した元データと計算済み四分位数を使い、0〜22分の共通軸に横向きの箱ひげ図を配置します。四分位数は上下半分の中央値、ひげは1.5 × IQRの判定境界内にある観測値までです。Aの20分の注文を残してください。見出しは「BとCの中央値は同じだが、Bの中央部分はより広く分布している」とし、件数と計測の定義を示します。有意差、因果関係、生産性の順位は主張しないでください。
確認したグラフと依頼文を使ってPresentiで発表の下書きを作り、見出しと説明を調整します。挿入したグラフは計算値と照合してください。スライド作成によって統計的な正しさが確立されるわけではありません。完成した一枚から、聞き手が中央値と箱の広がりを読み取り、独立した点が何を意味し、何までは意味しないかを理解できるようにしましょう。