研究方法を発表するなら、まず「研究デザインと対象者」「実施手順」「測定と分析」の3枚に分けると整理しやすくなります。聞き手が結果を解釈するために必要な条件は本編に残し、正確な指示文や詳細な記録は補足スライドに置きます。論文の方法部分を、そのまま小さな文字で詰め込む必要はありません。

出発点は研究計画書と実施記録です。そこから内容を整理し、教育・研究発表用のスライドのたたき台にできます。見た目が整っていても、未実施の研究を完了したように書いたり、結果から言える範囲を広げたりしてはいけません。

研究の問いから、研究デザイン、手順のタイムライン、分析の3枚のスライドへ情報を整理する図。

研究方法で何を説明するかを決める

細かな条件が正しく並んでいても、研究の筋道が伝わるとは限りません。聞き手が知りたいのは、問いに答えるために、誰を対象として何を比較し、どのように実施し、得られた情報をどう判断に結びつけたかです。

研究計画の発表なら、これから行うこととその理由を説明します。完了した研究なら、計画からの変更も含めて、実際に行ったことを示します。一部が進行中である場合は、その部分を明記し、予定と実施済みの記述を混ぜないようにします。

「手順」は何をしたか、「方法を選んだ理由」はなぜその方法を使ったかに当たります。例えば2種類の画面を比較する研究で、参加者ごとに片方だけを使ってもらうのは、最初の画面で覚えたことが次の画面の操作に影響するのを避けるためです。手順と理由を短く組み合わせると、研究の判断が見えます。

1つの研究例から3枚を組み立てる

大学図書館の予約ツールを対象にした、架空の学生研究を使います。問いは「メニューの表現を分かりやすくすると、1年生が助けを借りずに予約を完了しやすくなるか」です。2つの試作画面では、部屋、日時、操作手順を同じにし、メニューのラベルだけを変えます。

1つの授業から希望者30人を募集する計画でしたが、締め切りまでに参加したのは24人でした。コンピューターで無作為に12人ずつ割り付け、各参加者は片方の画面だけを使います。24人全員がセッションに参加し、割り付け後に除外した人はいません。

全員が同種のノートパソコンで、同じ架空の予約課題に取り組みます。制限は6分、指示文は共通、ヒントは出しません。成功は、制限時間内に、助けを借りず、指定された部屋・日付・時間の予約確認画面に到達することと定義します。

1枚目:研究デザインと対象者を示す

見出しは「2種類のラベルで、同じ予約課題を比較」とします。図は「参加者24人 → 12人ずつの2群」という分岐で十分です。「A群」「B群」だけでは聞き手が意味を覚える必要があるので、「従来のラベル」「変更後のラベル」と直接書きます。

募集と割り付けは別の話です。この例では、1つの授業の希望者を集めています。大学全体から無作為に抽出した標本ではありません。2群への無作為割り付けを行っても、参加者が大学全体を代表することにはなりません。

研究の問い:分かりやすいメニューラベルは、助けを借りない予約完了につながるか。対象:1つの授業から参加した1年生24人。割り付け:12人ずつの2群へ無作為に割り付け、各自が片方の画面だけを使用。共通条件:選べる部屋と日時、課題、端末の種類、制限時間。

口頭では、専門用語を増やすより、この比較にした理由を説明します。過去の利用経験を測定し、それが判断に関わるなら示します。ただし、記録していないのに「両群の経験をそろえた」と付け加えてはいけません。

2枚目:実施手順を時系列で見せる

見出しを「課題は1つ、制限6分、ヒントなし」とし、指示の確認、指定画面を開く、予約を試みる、成功または時間切れで終了する、という流れを描きます。終了条件を見せることで、参加者ごとに異なる時間を与えたわけではないと分かります。

練習の有無、タイマーを開始する時点、研究者の介入は結果に関わります。この例では練習を行いません。参加者が指示を読み終え、試作画面が表示された時点で計測を始めます。指示を読む時間を、操作時間に含めていないことも分かるようにします。

1. 共通の指示を読む。2. 割り当てられた試作画面を開き、計測を開始する。3. ヒントなしで指定の予約を行う。4. 正しい予約の確認画面に到達するか、6分が経過した時点で終了する。全参加者について、成否と操作中の移動を記録する。

クリックごとの画面をすべて並べる必要はありません。条件と順序を伝えるには、短いタイムラインのほうが読みやすい場合があります。実際の試作画面と指示文は、質問されたときに参照できる補足スライドへ置きます。

希望者24人を12人ずつ2群に割り付け、同じ予約課題に制限時間6分で取り組む流れ。各群12人中の予約成功人数を比較する計画で、結果は示していません。
両群で課題と実施条件をそろえます。変えるのはメニューラベルであり、分母や終了条件ではありません。

3枚目:測定項目と分析をつなぐ

見出しは「まず支援なしの完了率、次に操作の寄り道を比較」とします。単に「使いやすさを測定」と書かず、何を第一の判断材料にするかを定義しましょう。

この例の主要な指標は、各群で成功した人数を割り付けた12人で割った値です。2群の差はパーセントポイントで示します。時間切れは、観測できなかった欠測ではなく、定義に沿って観測した未完了として扱います。

補助的には、予約に必要な経路以外のメニューを選んだ回数を数えます。同じ誤った選択を繰り返した場合も、その都度1回と数えるなど、ルールを明示します。記録映像にはラベルが映るため、操作を分類する人にはどちらの画面かが分かります。この状況を、分類担当者に条件を知らせない「盲検」とは呼びません。

主要指標:6分以内に、ヒントなしで正しい予約を完了した割合。各群の成功人数 ÷ 割り付けた12人を求め、群間の差をパーセントポイントで示す。補助指標:参加者ごとの不要なメニュー選択回数。同じ選択の繰り返しも数える。参加者の流れ:24人を割り付け、24セッションを実施、割り付け後の除外なし。

厳密そうに見せるためだけに、統計検定の名前を加えてはいけません。実際に検定を使ったなら、比較対象、前提、不確実性を補足資料で説明できるようにします。この例は記述的な比較の方法を示すものであり、結果、信頼区間、有意差を作り出してはいません。

計画と実際の実施を分ける

予定30人と実際24人を、1つの曖昧な数字にまとめないようにします。完了した研究の図には24人を使い、当初の募集目標が30人だったことと、未達の理由を募集記録に基づいて補足します。

研究計画の段階なら、「30人を募集し、15人ずつ割り付ける予定」と書きます。まだ実施していないのに、24人が参加し除外がなかったという完了済みの流れを使ってはいけません。

途中で指示を変えたなら、いつ、誰に対して変更したかを示します。録画に失敗した場合も、補助的な操作指標の欠測と、予約の成否そのものが不明な状態は分けます。1項目の記録がないという理由だけで、参加者の全データを黙って外さないようにします。

再現や確認に必要な詳細を補足スライドへ置く

補足資料は、何でも保存する場所ではありません。研究上の判断を説明するために、必要な記録をすぐ取り出せるように整理します。

  • 募集と割り付け:参加条件、募集期間、参加者の流れ、割り付け手順。
  • 課題と素材:実際の指示文、両方の試作画面、計測の開始・終了条件。
  • 測定と分類:不要な操作の定義、繰り返しの扱い、欠測・除外の基準。
  • 分析:計画した比較、分母、開始後に変更した点。

個人を特定できる参加者の記録を、公開スライドに載せる必要はありません。関係する同意や審査の手続きは、実際に行った内容を説明し、制限が必要な記録は適切な保管先に残します。

この方法で比較できるのは、参加した人たちが、1つの課題で2種類のラベルを使ったときの違いです。長期的な使い勝手、図書館の全業務、学生全体への効果まで示すものではありません。結果を見せる前に、その範囲が聞き手に分かる構成にしましょう。