顧客クレームの分析資料では、改善策を提案する前に、何を数えているのかを説明する必要があります。連絡回数、クレーム案件数、問題のあった注文数、顧客数は、それぞれ別のものです。混同すると、根拠が示す以上に問題を大きく、小さく、あるいは広範囲に見せてしまいます。

まず「どのクレーム分類を調査し、対応を検討するか」という一つの判断に絞ります。分析結果を判断につなげるには、問題・解決策・根拠でプレゼンを組み立てる方法が参考になります。ここでは、その一歩前の、クレーム件数を比較できる状態にする作業から始めます。

顧客からの複数の連絡をクレーム案件にまとめ、緊急性の高い問題には別の印を付けた図。
重複する連絡を案件ごとにまとめ、件数が最も多い分類と、最も緊急性の高い問題を区別します。

グラフを作る前に「1件」の定義を決める

ある顧客が配送遅延についてメールを送り、その後電話で状況を確認し、最初のメールにも返信したとします。これは、一つのクレーム案件に対する3回の連絡と数えられます。その顧客が梱包の破損も報告した場合、別案件とする運用も、同じ案件に二つ目の分類を付ける運用もあります。分析ではどちらのルールを使うのか、明記しましょう。

元の表には、匿名化した案件ID、受付日、主分類、対応状況、重大性を示す印を残します。注文番号は、案件との対応関係を確認してから付けます。プレゼンに必要なのは集計結果であり、顧客の連絡先や非公開のメッセージをそのまま載せる必要はありません。

全体に対する構成比を示すグラフでは、1案件に一つの主分類を付けます。複数の分類を付けるなら「問題への言及件数」と表記し、合計が案件数を超える場合があると説明します。すべての分析でどちらか一方が正しいわけではありません。数え方と表示名を一致させることが大切です。

具体例:210回の連絡を150件の案件にまとめる

架空のオンラインショップの、1か月分のクレーム記録を使います。チームは210回の連絡を150件のクレーム案件にまとめ、各案件に一つの主分類を付けました。以下の数値は説明のために作成したもので、実際の顧客成果ではありません。

主分類案件数150件に占める割合累積構成比
配送遅延9060.0%60.0%
返金の遅れ2516.7%76.7%
商品の破損2013.3%90.0%
返品条件が不明確1510.0%100.0%

分類別の案件数の合計は150件です。配送遅延は90 ÷ 150 = 60%であり、顧客や注文の60%を意味するわけではありません。上位二つの分類は115件、約76.7%です。計算には丸める前の値を使い、表示するときだけ桁を丸めます。

どの分類が最多かを示すだけなら、件数の多い順に並べた棒グラフで十分です。いくつの分類をまとめて調べるかの判断に役立つなら、累積構成比の折れ線を加えます。ASQのパレート図ガイド(英語)では、頻度や費用など、明示した尺度で分類を並べる方法を説明しています。件数による順位を、いつの間にか被害や金銭的影響の順位として扱わないようにしましょう。

「80対20の法則」という見出しに、データを無理に合わせる必要はありません。この例では四つの分類のうち上位二つが案件の約76.7%を占めています。伝えるべきなのは、実際の分布です。

件数が増えても、注文当たりの比率は下がることがある

次に、最初の月がクレーム150件、注文1,000件だったのに対し、翌月はクレーム180件、注文1,500件になったとします。案件数は30件、20%増えています。一方、注文100件当たりの案件数は15件から12件に減っています。この二つは両立します。

指標A月B月変化
新たに受け付けたクレーム案件数15018030件増加
受注件数1,0001,500500件増加
受注100件当たりの新規クレーム案件数1512注文100件当たり3件減少

これは業務量の比率であり、クレームが発生した注文の割合ではありません。今月受け付けた案件が以前の注文に関する場合もあれば、一つの注文から複数の案件が生じる場合もあります。問題があった注文の割合を正確に報告するには、対象となる注文群を定め、案件を重複のない注文に結び付け、適切な観察期間を確保します。

スライドの見出しは「クレーム対応件数は増えた一方、新規受注100件当たりの案件数は減少」とすると、両方の結果を保てます。「顧客満足度が20%改善」とすると、別の指標と、記録からは導けない結論を作ってしまいます。

発生頻度と重大性をそれぞれ見える形にする

最も高い棒は、調査の出発点を示します。ただし、すべての優先順位を決めるものではありません。配送遅延を調べる間にも、件数の少ない商品破損の一部に緊急対応が必要かもしれません。重大な案件は、組織で定めたエスカレーション手順で扱います。その分類が最多になるまで待たせるべきではありません。

対応状況を別に示すことで、議論も変わります。返金の遅れ25件には、解決済み、返金処理待ち、顧客からの情報待ちなど、異なる段階の案件が含まれ得ます。経過日数や解決までの時間を比較する前に、それぞれの定義を示しましょう。未解決の案件では、最終的な解決時間はまだ分かりません。

左側にクレームの発生件数、右側に未解決またはエスカレーション済みの案件を置くと、二つの問いを分けて示せます。重みの意味と、それがどの判断に役立つかを説明できない限り、まとめて加重「優先度スコア」にするのは避けます。

業務レビューを5枚のスライドで構成する

  1. 判断事項と対象範囲。 集計期間、対象チャネル、求める調査を示します。
  2. 数え方。 210回の連絡を150件にまとめた方法と、1案件に一つの主分類を付けるルールを説明します。
  3. 傾向。 分類別の件数と実際の累積構成比を示し、グラフに尺度名を記します。
  4. 背景。 注文量の比較と、未解決またはエスカレーション済み案件を並べます。単位は混ぜません。
  5. 次に調べること。 考えられる原因を切り分けるために必要な記録と、確認する担当者を明示します。

配送遅延なら、該当案件を出荷記録や配送会社の記録と照合し、出荷前の遅れと輸送中の遅れを分ける作業が考えられます。「荷物が遅く届いた」というクレームで分かるのは、報告された問題です。どの工程に原因があるかまでは特定できません。

調査の依頼時点で、配送会社の変更、増員、測定済みの削減効果まで約束する必要はありません。問題を定義した後に本格的な改善プロジェクトへ進む場合は、既存のDMAICのプレゼン構成ガイド(英語)が使えます。この会議では、現在のクレーム記録から言えることに集中しましょう。

スライドの下書きに使う文章を準備する

件数と定義を確認できたら、Presentiのテキストからスライドを作る機能で、文章を資料の形に整理できます。数値は先に元の表で計算してください。プレゼンの生成は、案件の重複整理や、適切な分母の判断の代わりにはなりません。

連絡回数とクレーム案件数、注文100件当たりの案件数と問題のあった注文数を区別した、Presentiの英語版Paste Text入力画面。
Presentiの実際の英語入力画面に、クレーム分析の原稿を入力した状態です。数値は入力前に確認しています。

次の架空のクレーム分析から、業務レビュー用の5枚のスライドを作成してください。A月は210回の連絡を150件の案件にまとめ、各案件に一つの主分類を付けています。配送遅延90件、返金の遅れ25件、商品破損20件、返品条件が不明確15件です。80対20の分布だと断定せず、件数、構成比、累積構成比を示してください。A月の注文は1,000件、B月はクレーム180件、注文1,500件です。比較指標は「受注100件当たりの新規クレーム案件数」とし、「問題のあった注文の割合」とは呼ばないでください。発生頻度、未解決の状態、重大性を分けてください。配送遅延案件について、出荷記録と配送会社の記録の確認を提案してください。原因、顧客の発言、削減額、改善結果を作らないでください。

下書きの確認では、計算と同じくらいグラフの表示名に注意します。数値が正しくても、ラベルが間違っていれば会議を誤った方向へ導きかねません。読者が、提案の根拠となる案件群をたどれ、さらに何を調べる必要があるか理解できる資料にしましょう。